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脱毛症(男性・女性)

脱毛症について

脱毛症について生え変わりで抜ける毛の量より多くの毛が抜けてしまう状態を「脱毛症」と言います。頭髪の脱毛症が問題となりやすいですが、脱毛症は髪だけでなく眉毛や睫毛、髭、体毛といった全身の毛に生じる可能性があります。「脱毛症」はある特定の疾患のことではなく、大きく2つに分類されます。1つは毛包と呼ばれる毛を作り出すものや毛が何らかの理由で破壊されてしまうもので、もう1つは毛の生え変わりの周期が乱れることが原因で抜け毛が増えてしまうものです。

脱毛症の中でもよくみられる円形脱毛症は前者で、本来病原体などから身体を守る働きをする「免疫」が誤作動を起こし、毛を作っている毛包を壊してしまうことが原因で毛が抜けてしまいます。一方、男性ホルモンが原因で毛の生え変わりが早くなって抜け毛が増加し、毛が小さく目立たなくなるために薄毛となる男性型脱毛症と呼ばれるものもあります。

その他、脱毛症の原因には細菌や真菌(かび)への感染や甲状腺疾患、膠原病などの内科的な疾患、薬剤や放射線治療の副作用などもあります。

男性型脱毛症について

毛周期というのは、髪の毛が成長したり抜けたりする一定期間のサイクルのことを指し、男性型脱毛症はこの周期が乱れることで起こる脱毛症です。原因はアンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンで、ほとんどの場合数年続くべき毛の成長期が極端に短くなってしまうため成長が不十分なまま、毛が短く細く変化してしまう(ミニチュア化)ために薄毛になってしまいます。毛の根元には、毛を作る指令を出している毛乳頭と呼ばれる脂肪の塊があります。この細胞が男性ホルモンを受け取ると、酵素(5α-還元酵素)が働いて”活性型”男性ホルモンに変化してしまいます。この活性型男性ホルモンはミニチュア化作用が強く、毛乳頭のすぐ上にある毛母細胞の増殖を妨げてしまうため、毛を作り出すことが難しくなり毛のミニチュア化が生じると言われています。


男性型脱毛症の治療

男性型脱毛症は、メカニズムが判明したために治療法は進歩を重ねており、現在では外用療法、内服療法、および自家植毛術の主に3つの治療法があります。しかし、疾患ではなく加齢変化の一種として解釈されているため、多くの有効な治療法は保険適用外となっています。

外用療法

男性型脱毛症の塗り薬としては、ミノキシジルが特によく用いられ、次にアデノシンがよく使われます。これらの塗り薬は毛乳頭細胞や毛母細胞を刺激して発毛を促進します。

内服療法

内服薬としては、フィナステリドとデュタステリドと呼ばれる5α-還元酵素阻害剤が用いられます。これらは活性型男性ホルモンが作られる仕組みを妨害し、活性型男性ホルモンが毛の工場に悪い影響を与えないようにすることで脱毛を防ぎます。なお、これらの薬剤の内服している場合、PSAという値が約半分まで低下します。これは前立腺がんがあると血中濃度が上がるもののため、内服を行っている際は健康診断などで見逃されないよう気を付ける必要があります。

自毛植毛術

後頭部の毛は、比較的男性型脱毛症になりにくいという特徴があります。この後頭部の毛を薄くなりやすい頭頂部や前頭部に移植するのが自毛植毛術と呼ばれる治療法です。この方法は手術の一種で、効果もみられやすいですが、塗り薬や内服薬に比べてかかる費用が高額になります。※当院では実施していないため、希望される場合は関連医療機関にご紹介いたします。

女性型脱毛症について

女性型脱毛症について男性型脱毛症と同様に、女性にもある特定のパターンのある薄毛の状態が生じることがあります。しかし女性の場合は、頭頂部や前頭部が薄くなりやすい男性とは違い、前髪が残ってその少し奥から頭頂部にかけて薄くなりやすい傾向があります。また、男性型脱毛症は男性ホルモンの影響であるということが判明しているのに対し、女性型脱毛症に関しては男性ホルモンの影響についての明らかなデータはなく、それ以外の女性ホルモンの状態などの様々な要因が関係していると言われています。

男性型脱毛症と女性型脱毛症は、特定のパターンを示す疾患として同様に語られやすいですが、この2つは異なるものとして区別することが必要です。

女性型脱毛症の治療

女性型脱毛症の治療の際には、ミノキシジルの塗り薬が特によく用いられます。この薬は毛乳頭細胞に作用して発毛を促進します。次に、低出力の光やレーザー照射もよく用いられる治療法です。その他、アデノシン、カルプロニウム塩化物の塗り薬を用いることもあります。男性型脱毛症の治療に用いられる5-α還元酵素阻害剤(フィナステリド、デュタステリド)については効果が認められていない他、妊娠の際に副作用が生じる可能性が指摘されているため、女性には使用すべきではないと言われています。いずれの治療も、男性型脱毛症と同様に、保険適用外となります。

円形脱毛症について

円形型脱毛症について毛を作る役割がある毛包の周囲に炎症が生じ、一部のリンパ球が自己免疫反応を起こして毛包の組織を破壊してしまう影響で毛が抜ける疾患が円形脱毛症です。本来、免疫は細菌やウイルスなどの病原体を攻撃して体を守る役割を持ちますが、その機能が何らかのきっかけで自分自身の身体に向いてしまうことによって起こる疾患を自己免疫疾患と呼び、円形脱毛症はその1つです。

脱毛症は円の形に1つ、頭部に生じるというケース以外にも、頭部に多発する場合や、頭部以外の眉毛や睫毛、髭、体毛など全身の様々な部位に生じるケースがあります。さらに、重症だと頭全体や身体の全ての毛が抜け落ちてしまう可能性もあります。円形の脱毛が頭部に1つだけ生じている場合、医学的には単発性通常型(単発型)と、多発する場合には多発性通常型(多発型)と、頭部全体に脱毛が生じた場合は全頭型と、脱毛が全身に生じている場合は汎発型と呼ばれています。また、稀に頭髪の生え際に帯状の脱毛が生じることがありますが、この場合は蛇行型と呼ばれます。通常型と比べて、全頭型、汎発型、蛇行型は治癒が難しいという特徴があります。

円形脱毛症は、一生に1回だけしか症状が現れないこともあれば、何度も繰り返し起こることもあります。兄弟姉妹、親子で発症するケースもよくみられ、遺伝的な体質が関係している可能性が指摘されています。また、アトピーの素因や甲状腺の疾患、膠原病とも関連があるのではないかと言われています。


円形脱毛症の治療

円形脱毛症は、主にステロイド局所注射、局所免疫療法、ステロイド外用療法、紫外線療法などで治療を行いますが、重症例ではステロイドパルス療法やJAK阻害薬内服療法が行われます。

ステロイド局所注射

ステロイド局所注射では、副腎皮質ステロイドを直接脱毛した部分の皮内に注射します。注射の前にリドカイン・プロピトカイン配合クリームなどの局所麻酔薬を使用して痛みを軽減することもあります。脱毛している部分が広いと注射回数も増えてしまうため脱毛の範囲があまり広くない場合にお勧めの治療法です。しかし、患者様がお子様である場合には選択しにくいといった欠点もあります。

局所免疫療法

局所免疫療法とは、脱毛した部分にSADBEやDPCPなどの化学物質を外用し、わざとアレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)を生じさせるという方法です。かぶれを繰り返すことによって、免疫バランスが変化し症状の改善が見込めます。脱毛が広い範囲にある患者様にも効果を期待できますが、アトピー性皮膚炎が合併している場合、皮膚炎が悪化してしまうため慎重に治療方針を検討します。なお、SADBEやDPCPは医薬品として認可を受けている薬剤ではありませんので、ひどいかぶれ等の副作用については患者様のご同意とご理解が必要です。

ステロイド外用療法

実施のしやすさのため、世界で広く取られている治療法が、ステロイドの塗り薬を使用したものです。

中波紫外線療法

円形脱毛症は、保険適用で中波紫外線療法ができます。

その他

脱毛が、急速かつ広範囲に進行するようなケースでは、入院での治療を行うこともあります。その際に行うのは点滴静注ステロイドパルス療法と呼ばれるもので、大量のステロイドを短期間で投与します。
その他、炎症を抑える治療として紫外線療法やグリチルリチン・グリシン・DL−メチオニン配合剤錠の内服などを行ったり、カルプロニウム塩化物外用液の使用やセファランチンの内服、液体窒素療法などを行ったりするケースもよくみられます。

2022年以降、円形脱毛症に対し、JAK阻害薬と呼ばれる2つ飲み薬、バリシチニブ(オルミエント)とリトレシチニブ(リットフーロ)が相次いで承認されました。 「脱毛範囲が頭部のおよそ50%以上である」 「過去6か月程度毛髪に自然再生が認められない」 などを満たす重症患者さんに限り、処方できます。 重症患者さんに対して、JAK阻害薬は従来の治療薬よりも、高い効果が確認されています。ただし、これらの薬剤の使用前には合併症の有無を調べる検査(胸部X線写真、血液検査など)が義務図けられております。