乾癬について
乾癬は、銀白色の皮膚の粉(鱗屑)を伴った境界のはっきりした赤い発疹(紅斑)が特徴で、全身の皮膚に発症します。頭部や肘・膝、臀部、下腿伸側など、機械的な刺激を慢性的に受けやすい部位に生じやすく、多くの場合青壮年期に発症します。発疹は多発することが多く、発疹の大きさや数、形には様々あります。複数の発疹が1つになって大きな病変になるケースもあります。約半数の患者様に軽度のかゆみの症状がみられる他、爪の変形や関節炎(関節症性乾癬)を伴うことが知られています。稀ですが、発熱に加え、全身に膿の溜まった皮疹が出ることがあります(膿疱性乾癬)。最近の研究では、高血圧、高脂血症などの生活習慣病の合併率が高く、さらには心血管障害のリスクが高くなることがわかっています。皮膚の炎症をしっかりコントロールすることで合併症のリスクを軽減できることが報告されており、皮膚症状のコントロールは重要です。
乾癬の治療
乾癬は軽快と悪化を繰り返す慢性疾患です。そのため治療方法は一律ではなく、患者様それぞれの症状の程度や状況を考慮して選択する必要があります。治療は塗り薬から開始することが多く、主にステロイド軟膏やビタミンD3軟膏、もしくはその配合薬が用いられます。これらはそれぞれ特性が異なるため、患者様の状況に合わせて適切なものを選択し処方いたします。また、内服薬としては主にレチノイド、シクロスポリン、メトトレキサート、アプレミラスト、JAK阻害薬などが用いられます。乾癬の治療法ではこれらの塗り薬と内服薬に加えて、紫外線療法が主な方法です。この3つ(外用療法、内服療法、光線療法)で効果が不十分の場合や関節症状を伴う場合、さらには内服薬で副作用が生じる場合などでは、生物学的製剤を注射する抗体療法を行うこともあります。
中波紫外線療法
当院では、全身へ均等に皮膚治療に有効な中波紫外線(311±2nm)を照射できる、「ダブリン3シリーズ NeoLux」という機器を採用しております。この機器はフィリップス社製でナローバンドUVBランプ48本、もしくはUVAランプ24本/ナローバンドUVBランプ24本を使用しております。ダブリン3シリーズ NeoLuxは、治療に必要な量の紫外線を、短時間で全身に均一に当てることが可能です。そのため、1回の治療にかかる時間が短縮され、高い効果を発揮できるようになりました。この治療では痛みを伴わないため、麻酔する必要はありません。皮膚へのダメージは少なく副作用として生じるのは軽い日焼け程度です。(皮膚がんの既往歴がある方や日光過敏症の方は、治療をお控え頂いております。)
乾癬は、保険適用で中波紫外線療法ができます。
掌蹠膿疱症
(しょうせきのうほうしょう)
について
膿疱と呼ばれる、膿の溜まった皮疹が手のひらや足の裏に沢山生じる疾患を掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と言います。掌蹠膿疱症は周期的に軽快と悪化を繰り返し、手のひらと足の裏以外にスネや膝にも皮疹がみられることもあります。最初は小さな水ぶくれだったものが、次第に膿疱に変化し、その後かさぶたになって皮膚の1番表面の薄い層である角層が剥がれ落ちます。皮疹が出始めた頃にかゆみの症状がよくみられ、鎖骨や胸の中央(胸鎖肋関節症)を始めとした関節に痛みが生じることもあります。足に生じる皮疹は水虫に間違われやすいため、皮膚表面の角層を少し取って顕微鏡で観察することで診断を確定する必要があります。白癬菌と呼ばれる水虫を引き起こすカビがいれば水虫です。また、かぶれや乾癬などとも間違いやすいため注意が必要です。
掌蹠膿疱症の治療
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の治療では、まず悪化の原因となるもの(歯周囲病巣感染や金属アレルギーなど)を除去します。悪化の原因となるものが見つからない場合は、対症療法としてまず塗り薬を使用します。強いかゆみが伴う場合や新しい皮疹が多く現れる場合は強いステロイド軟膏を処方し、軽快してきたらステロイド軟膏を弱くしたり、活性型ビタミンD3軟膏に変更したりします。それでも症状が良くならない場合は、紫外線療法を実施したり、ビタミンA誘導体の内服に加え、生物学的製剤の注射が選択されます。
中波紫外線療法
当院では、全身へ均等に皮膚治療に有効な中波紫外線(311±2nm)を照射できる、「ダブリン3シリーズ NeoLux」という機器を採用しております。この機器はフィリップス社製でナローバンドUVBランプ48本、もしくはUVAランプ24本/ナローバンドUVBランプ24本を使用しております。ダブリン3シリーズ NeoLuxは、治療に必要な量の紫外線を、短時間で全身に均一に当てることが可能です。そのため、1回の治療にかかる時間が短縮され、高い効果を発揮できるようになりました。この治療では痛みを伴わないため、麻酔する必要はありません。皮膚へのダメージは少なく副作用として生じるのは軽い日焼け程度です。(皮膚がんの既往歴がある方や日光過敏症の方は、治療をお控え頂いております。)
掌蹠膿疱症は、保険適用で中波紫外線療法ができます。
膠原病について
膠原病には厳密な定義はなく、症状が全身にみられるものと皮膚だけにみられるものの両方があります。今の時点では次の疾患が膠原病として考えられており、そのうち国の難治性疾患克服研究事業で特定疾患に指定され、治療費の補助があるのは、1.全身性エリテマトーデス(SLE)、2.全身性強皮症(SSc)、3.多発性筋炎・皮膚筋炎(DM/PM)、4.混合性結合組織病(MCTD)、5.シェーグレン症候群(SS)、6.ベーチェット病、7.血管炎症候群、8.成人スティル病、9.関節リウマチの9つです。特定疾患であると認定を受けると、重症度によっては医療費が免除されます。(1年に1回、書類での再審査があります。)詳細については当院までご相談下さい。
膠原病の主な治療
全身性エリテマトーデスについて
全身の様々な臓器(皮膚、腎臓など)に炎症が起こります。皮膚症状だけの場合は、多くの場合、ヒドロキシクロロキンやステロイドの投与で症状は軽快します。皮膚の症状がなかなか治らない場合は、ステロイドなどの塗り薬を併せて使用します。感染症や紫外線、寒冷刺激、妊娠、出産などが症状を悪化させる因子になるため、できるだけ避けるようにします。
全身性強皮症について
皮膚が徐々に硬くなっていく疾患です。全ての症状に対して効果があると認められた治療薬はなく、症状のある臓器や程度に合わせて適切な治療方法を選ぶことになります。発症6年以内あるいは硬化が進行している患者様には、皮膚硬化を改善するためにステロイドの注射や内服を行います。光線療法を併用することもあります。十分な効果がみられない場合、免疫抑制剤を用いるケースもあります。
全身性強皮症では血管障害も生じるため、カルシウム拮抗薬、プロスタグランジン製剤、抗血小板薬、セロトニン拮抗薬、ビタミンE製剤などを用いて血流の改善を目指します。
シェーグレン症候群について
シェーグレン症候群は、炎症が汗や唾液といった全身の外分泌腺に生じる自己免疫疾患です。主な症状は眼、口の中などの乾燥で、それらの腺症状と血行障害や末梢神経炎などの腺外症状の両方を考慮してそれぞれに治療を実施します。重要な臓器に障害が起こっている場合はステロイドや免疫抑制剤を用いた全身療法を行います。乾燥の症状に対しては、保湿剤や点眼薬などを使用します。この疾患は日光にあたることで皮疹が悪化する可能性があるため、日焼け止めを塗る必要があります。また、口腔内が乾燥すると虫歯になるリスクが上がるので、歯磨きやうがいをきちんと行うことが大切です。
先天性表皮水疱症について
表皮水疱症は、日常生活で生じる弱い外力でも簡単に皮膚や粘膜にびらんや水疱が生じてしまう疾患です。表皮と真皮は接着剤のように作用するタンパク質で強くくっついています。そのため、皮膚に外の力が加わっても簡単には剥がれません。しかしこの疾患ではその接着させるタンパク質が正しく機能しなくなってしまいます。症状が重いと、水疱やびらんが何度も形成されるために手や足の指が癒着してしまうなど、生活に支障がでるケースもあります。
表皮水疱症の治療
先天性表皮水疱症は遺伝性の疾患であり、現在のところ根本的な治療法は存在していないため、対症療法を行うことになります。ワセリンガーゼや非固着性シリコンガーゼなどを用いた方法を継続的に実施する必要があります。