色素異常症
(先天性、後天性を含む)に
ついて
皮膚の色を決める色素の量が何らかの原因で増加もしくは減少することによって皮膚色に異常が生じる疾患を、総じて色素異常症と言います。
色素異常症の種類
肌の色が抜けてしまうもの
- アルビノ(眼皮膚白皮症)
- 尋常性白斑
- 偽梅毒性白斑
- 化学性白斑(ロドデノール誘発性脱色素斑など)
- サットン母斑
- 脱色素性母斑
- まだら症
- フォークト・小柳・原田病
- 特発性滴状色素減少症
など
肌の色が濃くなりすぎてしまうもの
- シミ、そばかす
- リール黒皮症
- 摩擦黒皮症
- 老人性色素斑
- 色素異常性固定紅斑
- 網状肢端色素沈着症
など
肌の色が変わるもの
- 銀皮症…青みがかった灰色に着色する
- 柑皮症…黄色くなる
など
肌の色を決める
「色素」について
次の3つの色素が皮膚の色を決めるため、それらが増えたり減ったりすると皮膚の色に異常が生じます。
- メラニン(茶色、黒、紺色の成分)カロチン(黄色の成分)
- ヘモグロビン(赤色の成分)
- カロチン(黄色の成分)
メラニンについて
①のメラニンは茶色、黒色、紺色を生成し、3つの色素の中でも特に大きな影響力を持ちます。メラニンは動植物界に広く存在しています。人間の皮膚や髪、眼球などにも存在し、「黒色メラニン」と「黄赤色メラニン」の大きく2種類に分けられます。
黒色メラニンは別名ユーメラニン、真性メラニンと、黄赤色メラニンは別名フェオメラニン、亜メラニンとも呼ばれており、私たちの皮膚や毛髪の色はこの2種類の比率によって決まります。例えば、この黒色メラニンの比率が高くなると、日本人を含むアジア諸国の人のように髪が黒くなります。
色素異常症は皮膚色を決める色素が増えたり減ったりする疾患で、色素の中でも特にメラニンを中心として起こりますメラニンが増えすぎたり、逆に減りすぎたりすると、しみや白斑といった色素異常症が生じます。
色素異常症の症状
色素異常症の主な症状は色素減少、色素脱失、色素沈着で、患部は限局性で現れるケースと広範囲に現れるケースがあります。
肌の色の違い
色素異常症の症状は、人種によって異なる場合があります。例としては尋常性白斑と呼ばれる疾患があげられ、この疾患では境界がハッキリとした白い完全脱色素斑を引き起こします。そのため、黄色人種やアフリカ系人種の方では「肌が白くなる疾患」として認識されます。一方、北欧人種では元から肌が白く尋常性白斑の皮疹が目立たないため、「肌が白くなる疾患」とは認識されません。ただし、尋常性白斑には皮膚が白くなるだけではなく、白くなった部分の周りで皮膚の色が濃くなるという特徴があります。そのため、北欧人種では白斑自体よりも辺縁の皮膚の色が目立つようになります。よって、白色人種にとって尋常性白斑は「肌が白くなる疾患」ではなく、「肌の色が濃くなる疾患」として認識されるようになります。
このように、同じ色素異常症でも症状がどのように認識されるかは遺伝子型(ジェノタイプ)によって異なります。尋常性白斑は北欧人種にとっては皮膚の色が濃くなるものとして、アフリカ系人種では皮膚色が白くなるものとして、アジア人種ではその両方の症状が出る疾患として認識されます。
色素異常症の原因
次のようなものが発症原因として挙げられています。
- 生まれつきによるもの
- 紫外線の暴露
- 自己免疫系の異常
どのようなものが発症原因であるかは、疾患によって異なります。限局性の色素減少の主な原因としては外傷や熱傷(やけど)、炎症性皮膚疾患(アトピー性皮膚炎・乾癬など)、化学物質(ハイドロキノンおよびフェノール類)の曝露などが挙げられます。なお、広範囲の色素減少は、ほとんどの場合、白斑や白皮症が原因です。
色素沈着は、多くの場合何らかの原因で慢性炎症が生じたあとで生じます。そのような慢性炎症後の色素沈着は、主に限局性に分布します。一方で、全身性疾患や薬剤、がんなどが原因で色素沈着が発生するケースもありますが、そういった場合、ほとんどは広範囲に分布します。
色素異常症の診断・検査
色素異常症は、皮膚や眼、神経系といった身体の診察や遺伝学的検査、血液検査などで診断します。
色素異常症の治療
色素異常症は、塗り薬(ステロイド、活性型ビタミンD3、タクロリムス)や紫外線療法などで治療します。