白斑について
白斑は、表皮の基底層や毛母に存在しているメラノサイト(色素細胞)という細胞が何らかの原因で破壊され、正常に皮膚の色の素であるメラニンを作ることができなくなってしまう疾患です。肌の色が白く抜けるのが症状で、この症状は手の平と足の裏を除く全ての体の表面に生じる可能性があります。また、生じた白斑は徐々に拡がっていくケースもあります。
白斑の種類
尋常性白斑
尋常性白斑は、白斑の中でも特によくみられるものです。尋常性白斑の原因は免疫の異常によるメラノサイトの破壊です。また、多くの場合、白斑の範囲は徐々に広がります。尋常性白斑の約20%の患者さんでは甲状腺炎を伴っていることが報告されており、検査が必要です。
老人性白斑
老人性白斑は、加齢に伴って生じる点状の小白斑です。大きさは5~10mm程度と小さく、あまり目立たないため、気にしない方や気づいていないという方も珍しくありません。
脱色素性母斑
脱色素性母斑は、先天的もしくは生後間もない時期に気がつくのが特徴の白斑です。成長に伴って大きくなったように見えることもありますが、白斑自体が大きくなることはなく、数が増えることもありません。いわゆる「白いあざ」です。
化学物質による白斑
化学工場等でカテコール化合物やフェノール化合物を扱う方に生じる白斑で、美白化粧品の使用を繰り返している場合にも起こることがあります。化学物質に接触した場所やその近くに白斑が生じます。
尋常性白斑について
尋常性白斑は、白斑の中でも最も高頻度でみられる後天性の疾患です。全身に白斑が生じるのが特徴で、完成すると完全に色が抜けた白斑になります。メラノサイトと呼ばれる色素細胞が何らかの原因によって減少もしくは消失することによって起こります。メラノサイトは紫外線から皮膚を守るためにメラニン色素を作り出しており、この細胞の働きが悪くなることで皮膚の色が白く抜けていきます。
尋常性白斑の症状
白斑は体のどこにでも生じる可能性があります。多く患者さんでは痛みやかゆみといった症状はありませんが、稀にかゆみや周囲に紅斑を伴う患者さんもいます。まだら状に色が抜けてしまうことで、精神的に苦しんでいる方もいらっしゃいます。
尋常性白斑の種類
尋常性白斑は、白斑の分布によって大きく3種類に分けられます。1つは分節型、もう1つは非分節と呼ばれ、この両方の型に当てはまらないのが分類不能型です。また、1人の患者様に発症する場合は混合型と呼ばれることがあります。白斑がどのように現れるかは、この分類によって異なります。
分節型の場合
分節型白斑では、白斑は分節と呼ばれる一定の神経の支配領域に沿って現れます。原則として左右どちらかだけの症状になり、比較的若い方に発症しやすいのが特徴で、特に20歳頃までの方によくみられます。10歳以下のお子様に発症するケースも珍しくありません。
非分節型の場合
非分節型白斑は、分節型ではない尋常性白斑の総称です。非分節型白斑にはあらゆる年齢層の方に発症し、進行性の症状が現れるという特徴があります。基本的には左右対称性に白斑が生じます。
非分節型白斑は症状の出方によってさらに次の3種類の型に分けられます。
- 限局型: 体幹や四肢の一部だけに発症する白斑で現れる白斑に対称性があるのが特徴
- 全身型: 全身に症状が現れる白斑
- 汎発型: 広範囲に症状が現れる白斑
汎発型は、症状が現れる範囲が全身には及ばないものの、分節には沿わず広がっているものを指し、症状が全身に広がっている場合は全身型に分類されます。
混合型の場合
分節型が発症し、それから数年以上が経過した後で非分節型が発症するというケースが稀にあり、そのようなケースは混合型に分類されます。分節型が改善傾向を示した後で非分節型の白斑が生じるのが特徴で、時間的、あるいは症状の経緯を考慮すると非分節型だけでは説明がつかない場合、両型の混合型と考えられます。
尋常性白斑の原因
尋常性白斑の発症原因は、分節型であるか非分節型であるかによって異なると言われています。
分節型の場合
分節型は白斑が神経領域に沿って生じるため、自律神経系の異常が原因で発症すると言われています。
表皮の基底層には、「メラニン」と呼ばれる物質を生成するメラノサイト(色素細胞)という細胞が存在しています。このメラノサイトはケラチノサイト(表皮細胞)の間に6~8個に1つの割合で混ざっていて、このメラノサイトが皮膚の色を作ります。
メラノサイトにとって周囲の環境は重要で、環境が整わないとメラノサイトは正常にメラニンを生成しません。自律神経系に異常が出ると、メラノサイトが生存、活動するための環境が保てなくなってしまい、メラノサイトが減少・消失してしまうと推測されています。分節型白斑はそのような仕組みで発症すると言われていますが、具体的に表皮の環境を壊してしまう原因となるのがどのような自律神経の異常かということは判明していません。
非分節型白斑の場合
非分節型白斑の原因は、自己免疫疾患ではないかと言われています。しかし、それ以外にさまざまな環境要因が合わさって複雑な病態になっており、詳しいことはまだ判明しておりません。現在も世界中で研究が続いています。
尋常性白斑の診断・検査
白斑は、多くの場合、医師が視診をして臨床的評価をすることで診断を行います。必要に応じて皮膚生検を行います。尋常性白斑と診断された場合は、自己免疫疾患が隠れていないか、合併症がないかを確認するために血液検査が必要になるケースもあります。
尋常性白斑の治療
白斑が生じた場合、市販の薬やセルフケアで治療することは難しいため、症状がみられた際はお早めに当院までご相談下さい。治療を早期に開始すれば、進行をゆっくりにしたり、症状があまり目立たないようにしたりできる可能性があります。
尋常性白斑の
薬物療法について
治療はステロイドの塗り薬が有効です。その他には、活性型ビタミンD3の軟膏(保険適用外)やタクロリムス軟膏(保険適用外)、ジャック阻害薬(保険適用外)を使用します。
急速進行症例に対しては、塗り薬だけではなく、ステロイドや免疫抑制剤などの飲み薬も使用します。
効果が実感できるようになるまでには時間がかかるため、根気よく治療を継続することが大切です。
1年以上にわたって白斑に変化がない症例に対しては植皮術などの外科手術も行われています。手術が必要な場合は、連携医療機関を紹介いたします。
尋常性白斑の
光線療法について
光線療法では、光源ランプを使用して肌に直接紫外線をあてることで、免疫の過剰反応を抑制すると共に皮膚を刺激してメラノン合成を促進します。紫外線は波長によっていくつかの種類に分類され、中波長紫外線(UVB)と長波長紫外線(UVA)に治療効果が認められています。
現在は「ナローバンドUVB療法」と呼ばれる方法が広く使用されており、これはUVBから有害な波長を除いて治療効果が高い波長のみを使用するというものになります。当院では一度に全身に紫外線を照射することが可能な最新鋭の機器を設置しております。ナローバンドUVB療法では紫外線を主に全身に照射しますが、「ターゲット型エキシマランプ」は比較的小型の白斑のみに照射することも可能です。その他、UVAを用いた「PUVA(プーバ)療法」という方法もありますが、現在ではほとんど行われておりません。
当院の尋常性白斑の光線療法の機器について
当院では、全身へ均等に皮膚治療に有効な中波紫外線(311±2nm)を照射できる、「ダブリン3シリーズ NeoLux」という機器を採用しております。この機器はフィリップス社製でナローバンドUVBランプ48本、もしくはUVAランプ24本/ナローバンドUVBランプ24本を使用しております。
ダブリン3シリーズ NeoLuxは、治療に必要な量の紫外線を、短時間で全身に均一に当てることが可能です。そのため、1回の治療にかかる時間が短縮され、高い効果を発揮できるようになりました。この治療では痛みを伴わないため、麻酔する必要はありません。
皮膚へのダメージは少なく副作用として生じるのは軽い日焼け程度です。皮膚がんの既往歴がある方や日光過敏症の方は、治療をお控え頂いております。
尋常性白斑は、保険適用で治療ができます。
尋常性白斑の対処方法
カバーメイク
白斑は全身の様々な部分に現れますが、特に顔などに生じた場合、患者様の生活の質が下がってしまったり、社会生活に影響が出てしまったりする可能性もあります。その対策として、白斑専用のカモフラージュ化粧品を用いたメイクのご提案も行っております。
日常生活における注意点
紫外線対策
色素が抜け落ちた皮膚では、急激で程度の重い光線過敏症(サンバーン)が生じる可能性があります。そのため、急激な日焼けには注意しましょう。
摩擦予防
また、白斑は物理的な刺激を受ける場所に生じやすいと言われています。そのため、日常生活で悪化することを防ぐため、ベルトを強く締め付けすぎないことや、下着やアクセサリーといった肌に擦れる素材に気を付けること、体を洗う際にタオルで強く擦らないことなどに気を付けることが大切です。
白斑についてよくある質問
白斑は感染しますか?
感染する疾患ではありません。
白斑を放置するとどうなりますか?
尋常性白斑は、放っておくと大きくなる可能性があります。
治療開始が早期であるほど改善しやすくなると言われていますので、気になる症状がありましたらお気軽に当院までご相談下さい。
尋常性白斑は難病に指定されていますか?
尋常性白斑は難病ですが、指定難病と呼ばれる厚生労働省の指定している難病の中には入っていないため、医療費の助成等はありません。